行政書士は事務所を2つ持てない|バーチャルオフィスは使えるのか

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「行政書士は事務所を2つ持てない」と聞いて、自宅の住所を出したくない人や複数の地域で動きたい人は困ってしまいます。バーチャルオフィスは使えるのか。この記事では行政書士法第8条の条文と、各行政書士会の運用の違いを分けて整理します。

「自宅を事務所にできるか」という論点は、以前の記事(自宅を事務所にできる?行政書士の事務所要件と自宅開業の注意点)で扱いました。今回はその逆、つまり自宅以外の選択肢と、事務所を複数持てるのかという疑問に絞って考えます。

行政書士法第8条が求めていること

まず条文を確認します。行政書士の事務所について定めているのは行政書士法第8条です。

(事務所)
第八条 行政書士(行政書士の使用人である行政書士又は行政書士法人の社員若しくは使用人である行政書士(第三項において「使用人である行政書士等」という。)を除く。次項、次条、第十条の二及び第十一条において同じ。)は、その業務を行うための事務所を設けなければならない。

条文が求めているのは「業務を行うための事務所を設けなければならない」ということだけです。持ち家か賃貸か、戸建てかマンションか、といった形態までは指定していません。ここは意外と誤解されやすいところです。

「二以上の事務所を設けてはならない」の意味

タイトルにある「事務所を2つ持てない」の根拠は、続く第2項です。

2 行政書士は、前項の事務所を二以上設けてはならない。

これは、個人の行政書士が業務を行うための事務所を、同時に2つ以上構えることはできない、という意味です。たとえば「平日は東京の事務所、週末は地元の事務所」というように、個人として複数の拠点を事務所として登録することは想定されていません。この点はあとで触れる行政書士法人の話とは別の制度なので、切り分けて理解しておくと迷いません。

使用人である行政書士は事務所を設けられない(第8条第3項)

第8条にはもう一つ、見落としがちな項があります。

3 使用人である行政書士等は、その業務を行うための事務所を設けてはならない。

他の行政書士や行政書士法人に雇われて働く「使用人である行政書士」は、そもそも自分の事務所を持てません。雇い主の事務所で働く立場だからです。開業前に「まずは他の事務所に勤めてみたい」と考えている人は、この規定のとおり自分名義の事務所は持てず、あくまで雇い主の事務所の一員として業務を行うことになります。

バーチャルオフィス・レンタルオフィス・シェアオフィスはどうなのか

ここが本題です。結論から言うと、行政書士法第8条には「バーチャルオフィスは不可」とも「専有スペースが必要」とも書かれていません。条文が求めているのは「業務を行うための事務所を設けること」だけで、その空間の借り方(賃貸・レンタルオフィス・シェアオフィス・バーチャルオフィス)を条文レベルで名指しして禁止・許可しているわけではないのです。

一方で、実際に行政書士として登録するには、都道府県ごとの行政書士会を経由した手続きが必要です。そして各行政書士会は、会則や内規、登録審査の運用の中で、事務所の実体をどう確認するかを独自に定めています。バーチャルオフィスやレンタルオフィスが認められるかどうかは、この会ごとの運用に左右される部分が大きく、全国一律の基準があるわけではありません。「バーチャルオフィスは使える/使えない」と断定的に語っている情報を見かけたら、それがどの行政書士会を前提にした話なのかを確認したほうが安全です。

法律と運用の違い行政書士法の条文=全国共通のルール。事務所の形態に関する具体的な審査基準=各都道府県行政書士会の会則・運用。この2つを混同しないことが、この記事でいちばんお伝えしたいポイントです。
自宅の一室を整えた行政書士事務所の水彩イラスト
レンタルオフィスやシェアオフィスが使えるかどうかは、単位会の運用によって判断が分かれます。

事務所調査で見られること(一般に言われていること)

登録の際には、事務所の実体を確認する調査が行われることが一般的だと言われています。よく話題になるのは、業務スペースが生活空間と区別できているか、郵便物や来客に対応できるか、事務所であることが分かる表示があるか、といった点です(事務所の表示については行政書士事務所に看板(表札)は必要?で扱っています)。

ただし、こうした基準はあくまで「一般によく言われていること」であり、行政書士法の条文そのものではありません。どこまで厳密に見られるかは単位会によって差があります。断定的な情報をうのみにせず、事務所の候補地が決まった段階で、所属予定の単位会に直接確認するのがいちばん確実です。登録手続き全体の流れは行政書士の登録手続きの実際にまとめています。

複数の地域で活動したいなら(行政書士法人という選択肢)

「個人としては事務所を2つ持てない」なら、複数の地域で活動したい人はどうすればいいのでしょうか。行政書士法には、行政書士法人という制度があります。設立の手続きを定めた第13条の8には、定款に記載すべき事項として次のようにあります。

(設立の手続)
第十三条の八 3 定款には、少なくとも次に掲げる事項を記載しなければならない。
三 主たる事務所及び従たる事務所の所在地

この条文から、行政書士法人であれば「主たる事務所」に加えて「従たる事務所」を設けられることが確認できます。個人の行政書士とは違う枠組みです。ただし、誰でもいない事務所を名前だけ増やせるわけではありません。第13条の14には次のような規定もあります。

(社員の常駐)
第十三条の十四 行政書士法人は、その事務所に、当該事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会の会員である社員を常駐させなければならない。

つまり、従たる事務所を設ける場合も、その事務所には該当都道府県の行政書士会に所属する社員が常駐している必要があります。複数拠点での展開は制度上可能ですが、法人設立そのものが独立した検討事項になるので、「開業したてで、とりあえず複数の地域で活動したい」という段階では現実的でないことも多いはずです。法人化を視野に入れる場合は、この記事とは別に単位会や専門家に相談することをおすすめします。

費用を抑えつつ要件を満たす現実的な考え方

開業準備中は、初期費用をできるだけ抑えたいものです。自宅の一室を家具やパーティションで区切って、生活空間と業務スペースを分ける方法は、費用を抑えながら独立性を持たせやすい工夫としてよく使われます(自宅開業の具体的な注意点は自宅を事務所にできる?行政書士の事務所要件と自宅開業の注意点で解説しています)。私も開業当初は、部屋の一角をパーティションで仕切って業務スペースを作りました。見た目以上に気持ちの切り替えがしやすくなります。

折りたたみパーテーションの商品写真

折りたたみパーテーション スレディ 3連(キャスター付き)

自宅の一室を事務所にするとき、生活空間との境目をどう作るかが悩みどころです。工事をせずに区切れるのがパーテーションの良いところで、来客のときだけ立てて、普段はたたんでおくという使い方もできます。

  • 幅1800×奥行500×高さ1800mm、3連の折りたたみ式と商品ページに記載があります
  • 360度可動のキャスター付き。動かして向きを変えられます
  • フレームと脚部はポリカーボネイト樹脂、パネルはホワイト(PVC/MDF)とブラック(アルミニウム合金/MDF)から選べると記載

価格・在庫・仕様は変わります。購入前に各サイトの現行表示をご確認ください。

事務所を構えたあとも、外出先で作業したい日は出てきます。相談先を訪ねた帰りにカフェで書類を仕上げたい、出張先で急ぎの申請書を直したい、というときにノートパソコンを一台持ち歩くのは負担に感じることもあります。そんなときは、必要な期間だけパソコンをレンタルする方法も選択肢になります。

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パーテーションで執務と応接を分けた自宅事務所の水彩イラスト
パーティションで区切るだけでも、業務スペースとしての独立性は作りやすくなります。

なお、事務所をどこに構えても、行政書士会への登録と会費の負担は発生します。会費は事務所の形態によって変わるものではないので、ランニングコストとして別枠で考えておくと計画が立てやすくなります(詳しくは行政書士会の会費というランニングコストをご覧ください)。

まとめ

行政書士法第8条は、個人の行政書士に事務所を1つ設けることを義務づけ、2つ以上は認めていません。使用人である行政書士は自分の事務所を持てません。ここまでは条文で確認できる、全国共通のルールです。一方、バーチャルオフィスやレンタルオフィスが使えるかどうかは条文には書かれておらず、実際の可否は各都道府県行政書士会の会則・運用に委ねられています。複数の地域で活動したい場合は、行政書士法人として主たる事務所と従たる事務所を設ける制度が用意されていますが、社員の常駐など別の要件も出てきます。断定できない部分は無理に断定せず、事務所の候補が固まったら所属予定の単位会に直接確認することを、開業準備の一歩として組み込んでおくと安心です。

この記事で参照した一次情報行政書士法(e-Gov法令API、法令ID 326AC1000000004)第8条・第13条の8・第13条の14(https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/326AC1000000004 )。第13条の3・第13条の5・第13条の21も確認しましたが、事務所に関する規定は含まれていませんでした。確認日:2026年8月20日。

——ヒロやん