合格しても登録できない人|行政書士の欠格事由8つを条文で確認する

行政書士試験に合格しても、破産や前科、公務員時代の処分などの事情があると「登録できないのでは」と不安になる方がいます。行政書士法第2条の2が定める欠格事由8つを条文で確認しながら、拘禁刑への呼び方の変化や復権の考え方、登録拒否事由との違いを整理します。
「資格を持っていること」と「登録できること」は別
試験の合格通知を受け取った瞬間は、多くの方がほっとします。ですが、その時点ですぐに行政書士として仕事ができるわけではありません。行政書士法は「行政書士となる資格を有する者」と、実際に業務を行う「行政書士」とを分けて考えています。仕事をするには、日本行政書士会連合会が備える行政書士名簿に登録し、行政書士証票の交付を受ける必要があります。
登録の実務的な流れは行政書士の登録手続きの実際で書きましたが、この記事ではその前提となる「そもそも登録できるかどうか」を条文にそって確認します。破産したことがある、前科がある、公務員をやめた事情がある――そうした経歴があっても、条文の条件から外れていれば登録できますし、条件に当てはまっていても、そこで終わりというわけではありません。まずは落ち着いて、条文を一つずつ見ていきましょう。
行政書士法第2条の2が定める欠格事由(8号すべてを表で整理)
欠格事由は行政書士法第2条の2に列挙されています。次の8号のいずれかに該当すると、その間は「行政書士となる資格を有しない」とされます。まずは条文をそのまま確認します。
(欠格事由)
第二条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、前条の規定にかかわらず、行政書士となる資格を有しない。
一 未成年者
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
三 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者
四 公務員(行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員を含む。)で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
五 第六条の五第一項の規定により登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
六 第十四条の規定により業務の禁止の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
七 懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、弁理士、税理士、司法書士若しくは土地家屋調査士の業務を禁止され、又は社会保険労務士の失格処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から三年を経過しないもの
八 税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第四十八条第一項の規定により同法第四十四条第三号に掲げる処分を受けるべきであつたことについて決定を受けた者で、当該決定を受けた日から三年を経過しないもの
条文だけだと読みにくいので、内容を表にまとめておきます。
| 号 | 内容(要旨) |
|---|---|
| 一号 | 未成年者であること |
| 二号 | 破産手続開始の決定を受け、復権を得ていないこと |
| 三号 | 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行終了・執行猶予期間満了等から3年を経過していないこと |
| 四号 | 公務員として懲戒免職を受け、処分の日から3年を経過していないこと |
| 五号 | 行政書士の登録取消処分(第6条の5第1項)を受け、処分の日から3年を経過していないこと |
| 六号 | 業務禁止処分(第14条)を受け、処分の日から3年を経過していないこと |
| 七号 | 弁護士・公認会計士・弁理士・税理士・司法書士・土地家屋調査士・社会保険労務士として除名や登録抹消等の処分を受け、その日から3年を経過していないこと |
| 八号 | 税理士法の規定により懲戒相当の決定を受け、その日から3年を経過していないこと |

「拘禁刑以上の刑」という言葉
第三号にある「拘禁刑以上の刑」という表現に、聞き慣れなさを感じる方もいるかもしれません。これは令和7年6月1日に施行された刑法改正によるもので、法務省は「令和7年6月1日に懲役及び禁錮が廃止され、新たな刑として拘禁刑が創設されました」としています。それまでは「懲役」と「禁錮」という別の刑がありましたが、この改正で一本化されました。
インターネット上には、改正前の情報のまま「禁錮以上の刑」と書かれているページも残っています。古い記事を読んで混乱しないよう、条文を確認するときは今の表現で理解しておくと安心です。なお行政書士法そのものも別途、令和8年1月1日から改正が予定されていて、その内容は行政書士法19条と令和8年改正で書いています。
破産と復権
第二号の「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は、破産をしたことがある人が一律に登録できないという意味ではありません。ポイントは「復権を得ていない」状態かどうかです。破産法第255条は、次のように定めています。
(復権)
第二百五十五条 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。次条第一項の復権の決定が確定したときも、同様とする。
一 免責許可の決定が確定したとき。
つまり、破産手続を経て免責許可の決定が確定すれば、その時点で復権します。破産=登録できない、というより、免責の手続きが完了しているかどうかが分かれ目になります。ご自身の状況がどの号にあたるかは、記憶だけに頼らず、事件記録や決定書で確認しておくと確実です。
三年を経過しない者、という数え方
第三号から第八号までは「〇〇の日から三年を経過しない者」という形で、欠格となる期間を区切っています。ただし数え始める起点は号によって異なります。刑の場合は執行を終わった日や執行を受けることがなくなった日、懲戒処分の場合はその処分の日というように、基準になる日付が違います。「もう3年経ったはず」と自分の記憶だけで判断せず、処分の通知書や判決書などで正確な日付を確認しておくと、あとで迷わずに済みます。
欠格事由に当たらなくても登録が拒否されることがある
ここまでの8号は「資格を有しない」場合の話でしたが、資格があっても登録が認められないことがあります。行政書士法第6条の2は、登録の申請を受けた日本行政書士会連合会が審査を行うことを定めていて、その第2項には次のような規定があります。
(登録の申請及び決定)
第六条の二 第二項 二号 行政書士の信用又は品位を害するおそれがある者その他行政書士の職責に照らし行政書士としての適格性を欠く者
この判断は、日本行政書士会連合会が資格審査会の議決を経て行うもので、登録を拒否する場合には申請者にあらかじめ理由が通知され、弁明する機会が与えられます。つまり、欠格事由の8号のどれにも当てはまらないことと、実際に登録が認められることは、制度上は別の話として整理されています。最終的な判断を行うのは日本行政書士会連合会であり、個々の事情によって結論が変わりうる部分です。

不安なときはどうするか
「自分の場合はどうなるのだろう」と考え込んでしまう方は少なくありません。欠格事由や登録拒否事由に触れる可能性がありそうだと感じたときは、一人で条文とにらめっこするより、登録を予定している都道府県の行政書士会(単位会)に、申請の前段階で相談してみるという方法があります。単位会は日常的に登録手続きを扱っていますから、必要な書類や確認しておくべき事項を具体的に教えてもらえます。行政書士としてどんな働き方が自分に合っているかを考える材料としては、行政書士に向いている人・向いていない人もあわせて読んでみてください。
もっと詳しく調べたいとき
条文の解釈や過去の運用まで踏み込んで理解しておきたいときは、行政書士法の逐条解説書を手元に置いておくと、条文の背景や趣旨まで確認できて安心材料になります。
詳解行政書士法 第5次改訂版(地方自治制度研究会 編/ぎょうせい)
行政書士法を条ごとに解説した本です。条文だけを読んでも「なぜその規定があるのか」までは分かりません。業際や登録で迷ったときに戻れる場所が1冊あると、判断に自信が持てます。
- 地方自治制度研究会 編、ぎょうせい刊。行政書士法の逐条解説書です
- 500ページ。2024年3月発売、ISBNは9784324113851と商品ページに記載があります
- 発売が2024年3月なので、令和7年法律第65号(令和8年1月1日施行)による第19条第1項・第23条の3の改正は反映されていません。改正部分はe-Govの現行条文でご確認ください
価格・在庫・版は変わります。購入前に各サイトの現行表示(さらに新しい改訂版が出ていないか)をご確認ください。
まとめ
行政書士試験に合格したことと、行政書士として登録できることは、制度上は別の手続きです。欠格事由は行政書士法第2条の2に8号として明記されていて、破産や前科、公務員時代の処分といった事情があっても、復権を得ている、3年を経過している、といった条件を満たしていれば、その号には該当しません。そして欠格事由に当てはまらない場合でも、登録の可否を最終的に判断するのは日本行政書士会連合会です。不安な事情を抱えているとしても、それだけで結論が決まっているわけではありません。条文を一つずつ確認しながら、必要なら単位会に相談し、落ち着いて手続きを進めていってください。
——ヒロやん

