使い終わった受験テキストと実務書はどうする|処分と買取という選択

合格して開業してみると、部屋の隅に積み上がった受験テキストと、開業準備のときに買った実務書が置き場所に困ってきます。捨てるのはもったいない、でも取っておいても使わない。今日はその線引きと、買取という選択肢の注意点を整理します。
合格したあと、受験テキストは残すべきか
結論から言うと、受験テキストのほとんどは残さなくていいと思っています。私自身、合格した年の春に本棚を見直して、テキスト・問題集・模試の束を大きく処分しました。理由は単純で、受験テキストは「試験に受かるための情報」であって、「実務をこなすための情報」ではないからです。出題範囲に沿って要点をまとめてあるぶん、実務で必要な細かい手続きの流れや添付書類の実例までは載っていません。
それに、試験対策の教材は法改正への対応が翌年度版に回されることが多く、開業した時点ですでに情報が古くなっていることもあります。見返したくなる気持ちはよく分かりますが、実際に開業してからテキストを開く機会はほとんどありませんでした。向いている人・向いていない人の記事でも触れましたが、勉強の仕方は人それぞれで、思い入れのある一冊が精神的な支えになることもあります。それだけは手元に残しておいて、あとは思い切って手放すという判断でよいはずです。

残すもの・処分してよいものの線引き
迷ったときのために、種類ごとの考え方を整理しておきます。
- 六法・条文集:毎年改正が入るため基本的に処分してよいものです。実務で条文を確認するときは、最新の条文をe-Govなどで直接見るのが確実です。
- 判例集(受験対策用):学習のために要点を絞った教材なので、実務での判例調査にはそのまま使えません。処分してよい部類です。
- 過去問・予想問題集:合格した時点で役目を終えています。手元に置く理由はほぼなく、譲るか処分してよいものです。
- 基本書・体系書:条文の背景や制度趣旨を丁寧に説明したものは、実務でも読み返す価値が残ることがあります。ただし何冊も重複して持つ必要はなく、一番信頼している一冊だけ残せば十分です。
迷ったら「開業後の自分がこの本を開く場面が具体的に浮かぶか」で判断するとすっきりします。浮かばなければ、処分か買取に回してよいということです。登録手続きの実際で書いたとおり、合格から登録までの間はやることが多く、荷物を整理する余裕もできてきます。このタイミングで一気に見直すのがおすすめです。
実務書は寿命が短い
受験テキストよりも扱いに悩むのが、開業準備の段階で買った実務書です。実務書は法改正のたびに内容が変わっていくため、想像以上に寿命が短いものが多くあります。手続きの流れを解説した本、書式集、逐条解説といった実務書は、根拠法令や施行規則が変わればその部分がそのまま古くなってしまいます。
年度版と銘打たれている実務書はもちろんですが、そうでない体裁の本でも、実際には数年おきに改訂版が出ています。古い版を後生大事に持っていると、知らないうちに古い情報のまま業務にあたってしまうリスクがあります。実務書は「読み終えたら終わり」ではなく「改訂されたら見直す」ものだと考えておくと、手放す判断がしやすくなります。
行政書士法の逐条解説を例に考える
分かりやすい例として、行政書士法の逐条解説を挙げます。行政書士法は令和7年法律第65号による改正が入り、令和8年1月1日に施行されています。手元にある逐条解説がこの改正を反映しているかどうかで、本としての価値がまったく違ってきます。
改正前の版は、条文の並びや解説の内容がすでに現行法とずれている可能性があります。買取に出す場合も、改正対応版かどうかは査定に影響しますし、自分の手元に置くのであれば改正未対応の版は実務の参考にしないほうが安全です。奥付の発行年月と、改正の施行日を照らし合わせるくせをつけておくと、実務書全般の見直しに応用できます。
買取に出すときに損をしないための注意
処分するにしても、状態のよいものはそのまま捨てるより買取に出したほうが気持ちよく片づきます。買取に出す前に確認しておきたいポイントをまとめておきます。
- 書き込み・マーカー・線引きは減額や買取不可の対象になりやすいので、状態はあらかじめ確認しておきます。
- CD-ROMや別冊付録、袋とじの答案用紙など、付属品が欠けていると評価が下がることがあります。
- 発行年度が古い実務書・年度版のテキストは、需要が乏しく買取対象外になる場合があります。
- 同じシリーズや同じ分野の本をまとめて出すと、査定の手間が省けて対応してもらいやすくなることがあります。
私も開業直後に、使わなくなった実務書と受験テキストをまとめて箱に詰めて送ったことがあります。事前に状態を軽く確認しておくだけで、査定結果への納得感がかなり変わりました。書籍の買取を専門に扱っているサービスを使うと、こうした手間を減らせます。
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フリマアプリと専門買取サービスの違い
手放し方には、フリマアプリで個人に売る方法と、書籍買取の専門サービスに送る方法の二つがあります。フリマアプリは自分で値段を決められ、専門書であれば買取サービスより高く売れることもありますが、出品作業・梱包・発送・購入者とのやり取りといった手間がかかります。専門買取サービスは、箱に詰めて送るだけで完結する手軽さが魅力ですが、値段は査定に委ねることになります。
ここで気になるのが、自分の持ち物を売ることに許可が必要なのかという点です。古物営業法第2条は、古物を売買する営業などを「古物営業」と定め、第3条で「前条第二項第一号又は第二号に掲げる営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会…の許可を受けなければならない」と定めています。この「営業」に当たるかどうかが分かれ目です。
(定義) 第二条 この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。
(許可) 第三条 前条第二項第一号又は第二号に掲げる営業を営もうとする者は、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
都道府県警察が公表している古物営業法のQ&Aでは、自己使用していた物や、自己使用のために購入したが未使用の物を売却するだけであれば古物商の許可は必要ないという整理が示されています。ただし、実際は転売目的で仕入れているような場合は許可が必要になるとも説明されています。自分の受験テキストや実務書を一度、フリマアプリや買取サービスで手放す程度であれば、この整理に当てはまると考えられます。とはいえ、許可が必要かどうかは営業として反復継続するかどうかによって判断が分かれる部分でもあるため、事業的に古書を扱いたい場合や判断に迷う場合は、最寄りの警察署(古物営業担当)に確認するのが確実です。

処分したあと、開業後に買い直すべきもの
本を減らすことに気を取られすぎて、必要な情報まで手放してしまうと本末転倒です。受験テキストや古い実務書を処分したあとは、実際の業務に直結する最新の実務書を、必要になったタイミングで買い直すという考え方がしっくりきます。分野ごとの手続きマニュアルや書式集は、受任した案件に合わせて一冊ずつ揃えていくほうが、無駄がなく内容も頭に入りやすいものです。開業前の段階で全分野を網羅しようとする必要はありません。50代から行政書士で開業する完全ガイドでも触れているとおり、開業後の学び方は受験勉強とは違う進め方でよいはずです。
本棚を整理したついでに、実務用に使いやすい書棚や収納を見直すのもおすすめです。
行政書士合格者のための 開業準備実践講座〔第4版〕(竹内豊/税務経理協会)
受験のテキストを処分したあと、代わりに手元に置くならこの手の本です。試験の知識と実務のあいだにある溝を、開業前に埋めておくための一冊。読んで「思っていたのと違う」と気づけるなら、それだけで元は取れます。
- 竹内豊 著、税務経理協会刊。行政書士実務直結シリーズの1冊です
- 348ページ。2024年2月発売、ISBNは9784419069728と商品ページに記載があります
- 受験対策の本ではありません。合格後、登録前後に読む前提で書かれています
価格・在庫・版は変わります。購入前に各サイトの現行表示(さらに新しい改訂版が出ていないか)をご確認ください。
まとめ
受験テキストは基本的に残さなくてよく、実務書は法改正のたびに寿命を迎えるものだと考えておくと、片づけの判断がしやすくなります。行政書士法の逐条解説のように、改正対応の有無で価値が変わる本もあるので、手放す前に一度は発行年をチェックしておきたいところです。買取に出すなら書き込みや付属品の有無を確認し、フリマアプリと専門買取サービスの違いも踏まえて、自分に合った方法を選んでください。自分の持ち物を売るだけなら古物商許可は基本的に不要ですが、反復継続して営業的に扱う場合は話が別なので、迷ったら警察に確認するのが安心です。片づいた本棚は、開業後の仕事にも案外よい影響を与えてくれます。
——ヒロやん

