行政書士はインボイス登録すべきか|2割特例と少額特例で判断する

本ページはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

開業したばかりで売上がまだ小さいと、インボイス登録は悩みどころです。登録すれば消費税を納める側になりますが、登録しないと仕事を断られるのでは、という不安もあります。2割特例と少額特例の中身を確認しながら、判断の順序を整理します。

行政書士の依頼者は「インボイスを欲しがる人」か

インボイスが必要かどうかは、依頼者のタイプでかなり違います。相続手続きや遺言書作成を個人から依頼される場合、依頼者は消費税の申告をしない一般消費者であることがほとんどです。この場合、行政書士がインボイスを発行できるかどうかは、依頼者の側にはほぼ関係がありません。

一方で、建設業許可や運送業許可の相談を法人や個人事業主から受ける場合は事情が変わります。相手が消費税の課税事業者であれば、支払った報酬について仕入税額控除を受けたいと考えるのが自然です。顧客の中心が法人・個人事業主か、個人の生活者かで、インボイスの重要度は大きく変わります。まずは自分の受任実績や見込み客の顔ぶれを振り返るところから始めるとよいでしょう。

中高年が窓辺の机で電卓とノートを前に収支を考える水彩イラスト
依頼者の顔ぶれによって、インボイスの必要性は変わります。

登録しない(免税事業者のまま)とどうなるか

適格請求書発行事業者の登録をしなければ、請求書に登録番号を記載できません。取引先が課税事業者の場合、その報酬分は仕入税額控除の対象にならないため、実質的に取引先の負担が増えることになります。値引きを求められたり、登録している他の行政書士に依頼が流れたりする可能性はゼロではありません。

ただし、これは相手が課税事業者で、かつ仕入税額控除を重視する場合の話です。個人の相続・遺言・許認可以外の相談が中心であれば、登録していないことが即座に受注減につながるとは限りません。基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、消費税の納税義務はもともと免除されています(2026年8月時点、国税庁タックスアンサー No.6501で確認)。登録しない場合は、この免税の立場をそのまま維持することになります。

2割特例で消費税の負担を抑えられる期間

登録をためらう最大の理由は、消費税の納税負担でしょう。ここで押さえておきたいのが2割特例です。これは、免税事業者だった人が適格請求書発行事業者として登録したことで課税事業者になった場合に、納める消費税額を「売上に係る消費税額の2割」に軽減できる措置です(2026年8月時点、国税庁「2割特例の概要」ページで確認)。

適用できるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日を含む各課税期間です(同ページおよび国税庁「2割特例の適用ができない課税期間」Q&Aで確認)。個人事業者の課税期間は暦年(1月〜12月)なので、2026年(令和8年)分の課税期間は9月30日を含むため、2割特例の対象になります。つまり2026年分の申告(2027年3月期限)が、個人事業者にとって2割特例を使える最後の年分ということです。2027年分からは、この措置は使えません。今日が2026年8月20日であることを踏まえると、今年中に登録して課税事業者になれば、2026年分についてはまだ間に合います。

なお、基準期間の課税売上高がすでに1,000万円を超えている課税期間や、以前から課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になっている課税期間には、2割特例は使えません(同Q&A「2割特例の適用ができない課税期間」で確認)。開業直後で売上が小さいなら、多くの場合は対象になると考えてよいでしょう。

少額特例で経理の手間を減らす

登録後に気になるのが、経理での確認作業です。ここで役立つのが少額特例です。基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者について、1回の取引の税込金額が1万円未満であれば、インボイスの保存がなくても帳簿の記載だけで仕入税額控除を受けられる、という措置です(2026年8月時点、国税庁「少額特例の概要」ページおよび確定申告書等作成コーナーの解説ページで確認)。

適用期間は令和5年10月1日から令和11年9月30日までです(同ページで確認)。2割特例より先まで続くので、2割特例が終わったあとも、少額な経費については当面この特例で経理の手間を減らせます。開業初期はコピー用紙や文房具、交通費など少額の支払いが多いはずなので、恩恵を感じやすい特例です。

適格請求書を出せる体制をどう作るか

登録すると決めたら、次は請求書の様式です。登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額など、適格請求書に必要な記載事項を漏らさず出せる体制にしておく必要があります。手書きやExcelでも対応はできますが、記載漏れのリスクや、あとで税率や消費税額を再計算する手間を考えると、はじめから対応済みの請求書ソフトを使うほうが安全です。開業したての行政書士でも、無料プランやシンプルな月額プランで始められるサービスはいくつもあります。

適格請求書を出せる体制にするならマネーフォワード クラウド確定申告を無料で試す

経理の手間をどう減らすか

課税事業者になると、消費税の集計や申告書の作成も必要になります。2割特例を使う場合でも、売上に係る消費税額を正確に把握しておかなければ計算のしようがありません。日々の入出金を都度エクセルに手入力していると、月末や申告期にまとめて時間を取られがちです。銀行口座やクレジットカードと連携して自動で仕訳を作れる会計ソフトを導入しておくと、2割特例が終わったあとに簡易課税や本則課税へ切り替える場面でも、記録が積み上がっている分だけ判断がしやすくなります。会計ソフトの選び方はこちらの記事でも比較しています。

経理の手間を減らすならfreee会計を無料で試す やよいの青色申告 オンラインを無料で試す

封筒・卓上カレンダー・硬貨を並べた俯瞰の水彩イラスト
請求書の体制と経理の仕組みは、登録前に一度整理しておくと安心です。

登録するか・しないかを判断する順序

ここまでの内容を、判断の順番として整理します。

  1. 依頼者の中心が課税事業者(法人・個人事業主)か、個人の生活者かを確認する
  2. 取引先や見込み客からインボイスを求められた実績・打診があるかを確認する
  3. 基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、2割特例の対象期間(〜2026年分)に間に合うかを確認する
  4. 1万円未満の少額な支払いが多く、少額特例の恩恵を受けやすい経理状況かを確認する
  5. 請求書ソフト・会計ソフトを導入する事務負担を、今の売上規模で許容できるかを考える

売上がまだ小さい開業直後は、収入や報酬の実態を先に押さえておくと判断しやすくなります。実際の受注状況については行政書士の収入・報酬のリアルもあわせて確認してみてください。開業時の届出とあわせて検討したい場合は、開業届と青色申告承認申請書の記事も参考になります。

2割特例が終わったあとをどう考えるか

2割特例は個人事業者であれば2026年分までで終了します。その先も課税事業者を続ける場合、本則課税(実際の仕入税額を積み上げて計算する方法)か、簡易課税制度(届出をして、業種ごとの仕入率で簡易に計算する方法)のどちらかを選ぶことになります。どちらが有利かは、経費の内容や売上規模によって変わるため、この記事では断定しません。少額特例は令和11年9月30日まで続くので、少額な経費についての事務負担は当面変わりませんが、消費税額そのものの計算方法は改めて検討が必要になります。

まとめ

行政書士のインボイス登録は、依頼者の顔ぶれと、2割特例・少額特例が使える期間を照らし合わせて判断するのが現実的です。個人の相続・許認可を中心に受任していて、取引先から登録を求められていないなら、急いで登録する必要はありません。逆に法人・建設業関連の依頼が多く、2割特例の対象期間に間に合うなら、登録して負担を抑えながら体制を整える選択肢もあります。

ここで一つ、行政書士としての立場も確認しておきます。行政書士は税理士ではないため、税務代理や税務書類の作成を行うことはできません。

(税理士業務の制限)
第五十二条 税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。

消費税の申告書作成や、登録・特例の適用可否についての最終的な判断は、税理士または所轄の税務署に確認してください。この記事はあくまで、登録するかどうかを考えるための材料です。

この記事で参照した一次情報国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm/国税庁「2割特例の適用ができない課税期間」Q&A(問115)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/115.pdf/国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)の概要」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/02.htm/国税庁確定申告書等作成コーナー「少額特例とは」https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru_sp/socat4/scid1926.html/国税庁「適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/invoice_01.htm/国税庁タックスアンサーNo.6501「納税義務の免除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm/e-Gov法令検索 税理士法(昭和26年法律第237号)第52条・第2条(法令ID326AC1000000237)(いずれも2026年8月20日確認)

——ヒロやん