行政書士の帳簿には何を書く?備付けと2年保存の義務

登録が終わってバッジと職印が届くと、次に気になるのが「帳簿って何を書けばいいんだろう」ということではないでしょうか。様式があるのかも分からず、とりあえずノートを買っただけという方も多いはずです。この記事では行政書士法第9条をもとに、帳簿に書く項目、様式の有無、保存期間、紙かソフトかの選び方まで、一次情報にあたりながら整理します。
行政書士法第9条が定める帳簿の備付義務
行政書士には、業務を行うたびに帳簿へ記録を残す義務があります。根拠は行政書士法第9条です。登録手続きを終えて行政書士として仕事を始めた瞬間から、この義務が発生すると考えておいたほうがいいでしょう。条文は次のとおりです。
(帳簿の備付及び保存)
第九条 行政書士は、その業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所氏名その他都道府県知事の定める事項を記載しなければならない。
2 行政書士は、前項の帳簿をその関係書類とともに、帳簿閉鎖の時から二年間保存しなければならない。行政書士でなくなつたときも、また同様とする。
「事件簿」と呼ばれることが多いですが、法律上の呼び方は単に「帳簿」です。呼び方は事務所によって違っても、書く中身は法律で決まっているというのが最初のポイントです。
何を書くのか
第9条第1項を読むと、帳簿に載せる項目は次の5つに整理できます。
- 事件の名称(どんな業務を受けたか)
- 年月日(受任日や完了日など)
- 受けた報酬の額
- 依頼者の住所・氏名
- その他、都道府県知事の定める事項
私自身、開業したての頃は「事件の名称」の書き方にいちばん迷いました。結局、依頼された業務名(たとえば「建設業許可申請」「車庫証明申請」など)をそのまま書けば十分だと分かって、それ以来は決まった形式で淡々と記録しています。「年月日」も、受任日だけを書くのか、完了日まで書くのか迷うところですが、私は受任日・完了日の両方を残すようにしています。あとで報酬額や案件数を振り返るときに、期間が分かっているほうが圧倒的に扱いやすいからです。毎回手作業で表を作るのは正直しんどいので、こうした記帳を専用のシステムに任せてしまう方法もあります。実際にどう使うかは、事件簿作成システムの使い方で具体的に書いていますので、あわせて読んでみてください。

「都道府県知事の定める事項」は県ごとに違う
条文の最後にある「その他都道府県知事の定める事項」が少しやっかいなところです。法律で決まっているのは全国共通の4項目までで、それに加える項目は都道府県ごとの規則に委ねられています。
実例として、東京都の行政書士法施行細則を見ると、法定の4項目に加えて「受託番号」を記載することとされ、帳簿は定められた様式に準じて作るとされています。つまり東京都では、事件の管理番号を振ることまで求められているわけです。
ここで正直にお伝えしておくと、今回、山口県行政書士会および山口県のホームページを確認しましたが、「都道府県知事の定める事項」として何が追加されているかを示す公表資料は見つけられませんでした。山口県の例規集は検索システムの都合でこの場では中身を確認できず、断定を避けます。お住まいの都道府県で開業される方は、所属予定の単位会(行政書士会)に直接確認するのが確実です。
保存期間は帳簿閉鎖の時から2年
第9条第2項の定めはシンプルです。帳簿は関係書類とあわせて、帳簿を閉鎖した時から2年間保存しなければなりません。ここで見落としやすいのが「行政書士でなくなつたときも、また同様とする」という一文です。つまり廃業したり登録を取り消したりしても、保存義務そのものは消えないということです。事務所をたたむときに帳簿だけ処分してしまわないよう、頭の片隅に置いておくといいでしょう。
紙で付けるか、ソフトで管理するか
帳簿の様式について、行政書士法自体は「こういう用紙を使え」とまでは指定していません(都道府県の定める様式がある場合はそれに従います)。紙のノートに手書きしても、Excelで管理しても、専用ソフトを使っても、必要な項目が記載されていれば法律上は問題ありません。私は開業当初は手書きのノートで済ませていましたが、案件数が増えてくると検索性の低さに苦労しました。今は記帳と会計処理をまとめて任せられるクラウド型のソフトに切り替えています。
特に会計ソフトの中には、報酬の入金管理から確定申告の準備までを一本化できるものがあります。帳簿の記帳作業を効率化したい方向けに、実際に使っているサービスを紹介します。
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会計の帳簿(青色申告の帳簿)とは別物
ここまで説明してきた行政書士法第9条の帳簿と、確定申告のために付ける会計帳簿は、似ているようでまったく別の制度です。混同している人を開業直後によく見かけるので、整理しておきます。
| 行政書士法第9条の帳簿 | 青色申告の帳簿 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 行政書士法第9条 | 所得税法・青色申告の承認 |
| 目的 | 依頼者・案件の記録を残す | 所得金額を正しく計算する |
| 記載内容 | 事件名・年月日・報酬額・依頼者住所氏名など | 収入・経費・資産負債の動き |
| 保存期間 | 帳簿閉鎖の時から2年 | 原則7年(一部書類は5年) |
国税庁のタックスアンサーによると、青色申告特別控除を最大の65万円で受けるには、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付したうえで、電子帳簿保存かe-Taxでの申告のいずれかを満たす必要があります。これを満たさない場合は55万円、簡易な記帳であれば10万円の控除にとどまります。この会計帳簿の話は、開業届や青色申告の承認申請とセットで準備することになるので、開業届と青色申告承認申請書の記事も参考にしてください。会計ソフトの選び方については開業したら会計ソフトはどれ?でまとめています。

付け忘れるとどうなるか
では、帳簿の備付けを怠るとどうなるのでしょうか。行政書士法第9条自体には、違反した場合の罰則規定は置かれていません。ただし、業務に関する義務を守らないことが、別の条文に触れる可能性はあります。
行政書士法第10条は次のように定めています。
(信用失墜行為の禁止)
第十条 行政書士は、行政書士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
さらに第14条では、行政書士が法律や命令、都道府県知事の処分に違反したとき、または行政書士たるにふさわしくない重大な非行があったときは、都道府県知事が戒告、2年以内の業務停止、業務禁止のいずれかの処分をできると定められています。帳簿の不備が直ちにこれらの処分につながると断定することはできませんが、業務に関する法定義務である以上、「バレなければいい」という性質のものではないと理解しておいたほうが安全です。難しく考えすぎる必要はありませんが、案件を受けたら都度その場で記録する習慣をつけておくのが、結局いちばん楽だと感じています。忙しい時期にまとめて記帳しようとすると、依頼者の住所や報酬額の細部を思い出せなくなることもあります。受任した直後に一行だけでも書いておく、というのが私なりの防止策です。
まとめ
行政書士法第9条の帳簿には、事件の名称・年月日・受けた報酬の額・依頼者の住所氏名、そして都道府県知事が追加で定める事項を記載します。保存期間は帳簿閉鎖の時から2年で、廃業後もこの義務は続きます。都道府県ごとの追加項目は単位会に確認し、様式が指定されていればそれに従いましょう。会計帳簿とは別物だという整理さえできていれば、あとは案件を受けるたびに淡々と記録していくだけです。紙でもソフトでも、続けやすい方法を選んでください。
——ヒロやん


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