行政書士の開業届と青色申告承認申請書|出す順番と65万円控除の条件

行政書士会への登録が済んで、ほっとしたのも束の間。次は税務署です。「開業届っていつまでに出すの」「青色申告の申請はどっちが先」——ここでつまずく方が多いので、順番と期限を整理しておきます。実は開業届の提出期限は2026年に変わりました。ネット上の記事はまだ古い期限のままのものが多いので、そこも含めてお話しします。
まず「開業日」をいつにするか
行政書士は、登録が完了しないと業務ができません。ですから開業日は、行政書士名簿への登録が完了した日を基準に考えるのが自然です。登録証の交付日、あるいは所属する単位会への入会日が目安になります。
とはいえ、開業日をいつにするかは自分で決めるものです。事務所の準備を始めた日にする方もいます。ただ、行政書士としての売上が立ち始めるのは登録後ですから、あまり前にずらす意味はありません。私は登録証を受け取った日にしました。
登録の手続きそのものは行政書士の登録手続きの実際に詳しく書いています。

開業届の期限は「1か月以内」ではなくなりました
正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。根拠は所得税法第229条です。2026年8月1日時点で施行されている条文は、次のとおりです。
(開業等の届出)
第二百二十九条 居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し、若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。
ここが変わったところです。以前は「その事実があつた日から一月以内に」でした。
e-Gov法令検索で施行時点を変えて条文を取り直してみると、2025年10月1日時点では「一月以内」、2026年1月1日時点では「確定申告期限まで」になっています。2026年1月1日から新しい期限が適用されているということです。国税庁のタックスアンサーNo.2090(令和8年1月1日現在の法令等)も「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」と説明しています。
期限が緩んだからといって、後回しにする理由はありません。屋号付きの銀行口座を作るとき、開業届の控えを求められることがあるからです。控えは必ず手元に残してください。
青色申告承認申請書の期限は変わっていません
こちらは所得税法第144条です。開業届とは別の期限なので、混同しないでください。
(青色申告の承認の申請)
第百四十四条 その年分以後の各年分の所得税につき前条の承認を受けようとする居住者は、その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)に、当該業務に係る所得の種類その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
整理すると、こうなります。
| 開業した時期 | 青色申告承認申請書の期限 |
|---|---|
| 1月1日〜1月15日 | その年の3月15日まで |
| 1月16日以後 | 業務を開始した日から2か月以内 |
たとえば9月に登録して開業した方なら、11月までに出す必要があります。開業届は翌年3月まで待てても、青色申告の申請は2か月で締め切られる——ここが今の制度のいちばん間違えやすいところです。
65万円の控除を受けるには何が要るか
青色申告の特典としてよく語られるのが青色申告特別控除です。国税庁タックスアンサーNo.2072によると、55万円の控除の要件は次のとおりです。
- 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること
- これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
- 貸借対照表、損益計算書および所得の金額の計算に関する明細書を確定申告書に添付し、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出すること
そのうえで、65万円にするには、55万円の要件に加えて次のいずれかが必要です。
- その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること
- その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Taxを使用して行うこと
要件に当てはまらない青色申告者は10万円の控除になります。
実務的には、e-Taxで出すほうが早いです。電子帳簿保存には別の要件がありますが、e-Taxでの申告なら、会計ソフトからそのまま送信できます。10万円の差は、行政書士の報酬にすると仕事1〜2件分です。ここを取りに行かない手はありません。

複式簿記を手書きでやる人はいません
「正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)」と言われると身構えますが、いまは会計ソフトが仕訳をしてくれます。銀行口座を連携しておけば、入出金がそのまま帳簿に流れていきます。65万円の控除を狙うなら、会計ソフトは事実上の必需品です。
どれも無料で試せる期間があるので、開業届を出したタイミングで一度さわってみてください。使い勝手の好き嫌いがはっきり出ます。
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提出のしかたと、そのほかに出せる書類
提出方法は、税務署の窓口、郵送、e-Taxのいずれかです。窓口なら、控えに受付印をもらえるので確実です。郵送するときは、控えと返信用封筒(切手を貼ったもの)を同封してください。
同じタイミングで検討しておきたい書類も挙げておきます。どれも「必ず出すもの」ではなく、当てはまる人だけです。
- 青色事業専従者給与に関する届出書……家族に給与を払う場合
- 給与支払事務所等の開設届出書……人を雇って給与を払う場合
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書……源泉徴収した税金を年2回にまとめたい場合
一人で始めるなら、開業届と青色申告承認申請書の2枚だけで足ります。
まとめ
- 開業届(所得税法第229条)の期限は「その年分の確定申告期限まで」。2026年1月1日から、以前の「1か月以内」ではなくなった
- 青色申告承認申請書(同法第144条)は3月15日まで、1月16日以後の開業なら開業日から2か月以内。こちらは変わっていない
- 迷ったら2枚まとめて、開業から2か月以内に出す
- 65万円控除には、複式簿記+期限内申告に加えて、電子帳簿保存かe-Taxでの申告が必要
- 控えは必ず手元に残す。屋号付き口座の開設で使うことがある
税金の話は、個別の事情で結論が変わります。この記事は制度の入口を整理したものです。ご自身の申告の判断は、所轄の税務署か税理士にご確認ください。私たち行政書士は税務代理ができませんので、ここは正直に線を引いておきます。
国税庁タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出などhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm
国税庁タックスアンサー No.2070 青色申告制度https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
国税庁タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm(いずれも2026年8月確認)
——ヒロやん

